生活に花と緑の空間を提案するグリア代表・田上菜穂美(6)

エントワークリンケージ

2008年02月03日 06:50

堅く閉ざされた同じ扉を前に立ちながら思い悩んでじっと立ち竦む人と、その扉を叩き続けてこじ開けようとする人がいます。後者の人の方が、結果はどうであれ、一歩踏み出した分、得られる結果に対して次ぎの行動が取れ、また一歩前進することになります。誰にでもわかる理屈ですが、これを実行することは躊躇なく誰もができることではないのが現実ですね。





今日のゲストは、そんな扉の堅牢さに怯むことなく挑戦し続けるグリア代表・田上(たのうえ)菜穂美(なほみ)さんです。田上さんとのご縁は、第一回目の守屋尚さん、三回目の松岡雄一さんと同じく、昨年の創業塾にありました。田上さんは塾生の中でも最初から目立った存在でした。わからないことはその場で率直に質問し、とにかく前に進むんだという意欲に溢れた女性です。

彼女は今、(財)くまもとテクノ産業財団が運営するビジネス・インキュベーション「夢挑戦プラザ21」の創業準備室にオフィスを構えています。今回はそこへお邪魔してお話をうかがいました。入居棟のエントランスにはいきなり彼女のフラワーアレンジメントの作品と棟内で行われる予定の講座のチラシが置いてあり、その存在感をアピールしていました。

田上さんが目論む事業は、フラワーアレンジメントサークル及び教室の運営事業で、フラワーディスプレイ、イベントフラワーアレンジメント商品・資材の販売。田上さんがこの事業を考えるようになったのは、今から14年前の結婚式の体験から。今でこそオリジナルウェディングが注目されていますが、その当時は結婚式会場のメニューから選んでいくシステムが主流でした。そんな中でせめて花やブーケだけはオリジナルをと、衣装に合わせてそれぞれ白と赤いバラを100本ずつ使いたいと考えたことでした。

しかし、これを結婚式場に任せてしまうといくらかかるかわからない。そこで、田上さんは知り合いのバラ農家から安く仕入れ、自分で作業をすることにしました。自分の思いを来てくださった方々にこうした形で示したかったのですね。このときの花を使った演出に関する苦労が、彼女の潜在意識に刷り込まれたことになります。以後それは、結婚生活の中で静かに眠ることになります。

ところで、田上さんの夢に向かうときのこうした情熱的な行動能力は、天性のものかもしれないと思わせます。それは短大卒業時の就職に際し、頑張ったことが結果に結びつく職業ということで、デーィラーの営業職を選択したことでもわかります。しかし、その就職に最初の壁が立ちはだかります。その会社の営業職は四大卒以上が採用条件だったのです。彼女は不採用通知を前にいったん諦めますが、今度は同じ会社の事務職の募集を目にします。

当初は営業の仕事に反対だったご両親も、一流企業の事務職となれば安心と、もろ手をあげて賛成です。彼女にとっては不満足な形ではありましたが、二度目の面接ということもあり、最初のときとは違って打ち解けた雰囲気で終始。面接後の感触も上々。そして、田上さんに合格の一報が入ります。しかし、それはナント、営業職として採用したいというものでした。当初営業という仕事柄、年齢の問題で不採用になった彼女が、今度は一転して、彼女なら女性営業職として長く勤務できるという期待も加わり、特例で採用したいと言う理由となりました。入社後、彼女は並み居る男性同期営業マンを抑え、トップの成績を上げるのです。

しかしながら、女性の営業職という縛りが彼女の足を引っ張ります。本来なら会社として女性を守る制度が、彼女には差別に思えます。もっと活躍したいという気持ちにこれらの制度が足枷に感じられたのです。売りたくても売れない、そんなジレンマが彼女に転職を決意させます。あるアパレルの常連であった彼女にその販売担当者からヘッドハンティングの声がかかり、田上さんは請われるままに転進。そこで13年間勤務することになります。

そして彼女に新たな転機が訪れます。お子さんの出産とそれに伴って新たな仕事探しの必要性がでてきたのです。そんな折、フラワーアレンジメント講師の募集広告が目に留まったのです。眠っていた花への思いに火がつきました。そして、応募。しかし、不採用。お子さんが小さいことで勤務が難しいと判断されたのです。ここで再び田上さんの情熱が燃え上がります。先方に、どうしても諦めきれないと再検討依頼の手紙を出したのです。

この情熱に打たれた先方は、とりあえず研修だけの参加を認めたのです。結果的に20名の応募者の中から、最後に残ったのは田上さんを含めた5名。そして研修中に実技、学科ともトップの成績を収めます。その中で昨年の6月、最初に独立したのは彼女でした。そして、冒頭でお話した創業塾の塾生となります。

塾終了後、彼女の行動力は加速します。技術系起業を支援する(財)くまもとテクノ産業財団へ応募するのです。彼女は、花のある暮らしを提供していきたいこと、「私のように小さな子供がいても、やり甲斐のある仕事が、自分のペースでできる形態をつくっていきたい」ということを財団にプレゼン。彼女のプレゼンは見事に成功し、ここにオフィスを構えることになります。

田上さんのオフィスに行くと、ショーケースにコンパクトにアレンジされた花籠が並べられていました。それが実にみずみずしいのです。それらは「ブリザーブドフラワーです」と教えてくれました。「ブリザーブドフラワー」とは、「生花に有機物質や色素を花本来の力で吸い上げさせた花。発色がとてもよく、水やり不要で3年以上劣化しません。しっとりした感触があり、生でもなく、ドライフラワーでもなく、限りなく生の花に近い質感をもった今注目の花」だそうです。

田上さんの目下の目標は、現在稼動中の三つの教室で30名の生徒数を45名まで増やすこと。ここまでが一人でマネジメントできる範囲で、まずここを一つの到達点に。その後は講師を採用して教室を増やしていく方向だそうです。

最後に田上さんの将来の夢をお聞きしました。すると、「フラワーアレンジメントを軸にした学校を開校したい」と言う大きな構想でした。それは、「学校でありながら、花と緑の空間提案のためのエキシビションスペースです」と。花と緑が演出する場の提案、そのためのカフェ、庭園が用意され、訪れる人が容易にイメージを膨らませることの出来るそんな空間を作り出すのだと、田上さんの瞳が輝いていました。





この夢の実現のためにどのくらいの期間を考えているのかと聞いたところ、田上さんはあっさり、「私の中ではピークをこれから5年だと決めています」と。ただ現状とこの夢の間の大きなギャップの青写真はまだできていないそうです。しかし、そのためにこの施設のノウハウを借りるのだと、彼女なりの最短距離を計算した計画を立てているところが、田上さんらしいところです。勉強になりました。

田上さんへのアクセスは下記まで。

グリア;〒861-2202 熊本県上益城郡益城町田原2081-10夢挑戦プラザ21
ホームページ;http://greea.ecgo.jp
E-mail;greea087@gmail.com
田上さんブログ;http://greea.exblog.jp/

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