緑のコンサル事業に挑む「植木町の植木屋」池富猛(22)

エントワークリンケージ

2008年05月22日 10:18

今年2/20に行われた商工会の交流会。この交流会では既に第14回のゲストにお迎えした広瀬生夫さんとお会いするご縁に恵まれました。その交流会の際、私に名刺交換を申し出てくれた方がいました。物腰が柔らかく、大変礼儀正しい方でした。お年を聞くとまだ29歳。にもかかわらず、事業歴は3年とのことで私の方が恐縮してしまいました。

という訳で、第22回目のゲストは、IGL(アイ・ジー・エル)代表の池富猛さん(29)です。池富さんの事業は、観葉植物・草花のリース、販売、管理からスペース・ガーデン・箱庭の制作、管理、ガーディング工事までと、いわば、緑のトータルコンサルティング事業を手がけられています。お話をうかがったのは、玉名合同庁舎のロビー。ここに池富さんの観葉植物が納められています。写真はそのツピタンサス。




池富さんは、長崎は佐世保のご出身。お父様が観葉植物の店を経営されており、早い時期からご自分も観葉植物でビジネスを行うことを決めていました。ただし、「兄がいて、家業は兄が継ぐだろうということと、親子といえども観葉植物に対する見方が違うということを実感して、独立することを考えていました」という独立精神に富んだ青年です。

地元の高校を卒業した池富さんは、経営者になるという明確な目的を持って、1997年、東京経済大学の経営学部に進学。卒業後の2002年1月にアメリカのミネソタ州にあるバラ造り農園にiiP(インターナショナル・インターンシップ・プログラム)を利用して研修生となります。ここで1年2ヶ月の間、修行の時間を過ごされました。

iiPとは、日本と世界の国々との国際交流を目的に設立された、米国国務省認定の団体です。iiPの本部は、米国ワシントン州シアトル。1979年10月、米国コロラド州政府教育庁により16名の日本人公立高校教師が教育視察団として招聘されたことからプログラムがスタート。現在,東京事務所を拠点とし、米国ワシントン州に米国事務所を持ち、国際的レベルで教育、文化、職業交流活動を展開。以来30年近くにわたり、15,000人以上の日本人が世界各地に派遣されているそうです。

アメリカへの旅立ちは池富さんにとってははじめての海外。アメリカで観葉植物を学ぶという本分を携え、英語に自信もないまま、降り立ったのはミネソタへのトランジットとなるイリノイ州のシカゴ空港でした。しかしそこで移民局のチェックに遭い、3時間程足止めを食ってしまうというハプニングに遭います。池富さんは片言の英語で懸命に説明しますが、研修生であることをなかなか理解してもらえず、ミネソタへの乗り継ぎの時間は迫っています。トランジット便のチケットを見せても担当官は余裕の様子。そのときの模様を池富さんは次のように語ってくれました。

移民局の控え室で待機していたら、「日本人なら日本語喋ってみろ」と英語で聞かれ、「こんにちは」なんて話していたら、部屋の後ろから日本語を話すことの出来るアメリカ人の方が来てて、色々と質問をされながら説明をし、通訳的なことをして頂いたおかげでホストの方にも連絡を取っていただき、乗り継ぎ便の案内、手荷物の引き渡し当をしていただいてなんとかミネソタ便に乗り込むことが出来ました。ですが、ビザは観光ビザを取得していたので、恐らくテロ発生後だった事から書類だけでは通らなかったのだと思います。

IIPに話したときにも「今まで語学不足でも書類だけで許可は下りてたのに、そんな事は一度も無かった」とのことでしたし。ついでに、滞在許可はその時に半年しか貰えずに、延長申請をした思い出があります。


ここで池富さんが過ごしたミネソタ州について見ておきましょう。アメリカでは、ハワイ州とアラスカ州を除いた隣接48州のなかで、最北端に位置する州。寒いことで有名で、「アメリカの冷蔵庫」の異名があるのがミネソタ州です。池富さんはなぜ、数あるアメリカの州の中で、この最北端の地を選んだのか?それは、北海道より以北に育つ北方地域の植物について学ぶためでした。




ミネソタ州(Minnesota MN)は、米国中西部の北、カナダ国境に接する州。州の東にはスペリオル湖があり、州の南北をミシシッピ川が流れている。東側はウィスコンシン州に、西側はノースダコタ州とサウスダコタ州に、南側はアイオワ州に接している。州都はセントポール市。ミシシッピ川を挟んだ隣の都市であるミネアポリス市と合わせて「ツインシティーズ」と呼ばれている。ミネソタの名前はダコタ族(アメリカ・インディアン)の「空の色に染まった水」を意味する言葉から取られている。

たどり着いたホストファミリーはイスラエルからの移民だったそうです。池富さんは与えられた時間を有効に使いたいという一身で、休みもろくに取らず働いたそうです。見かねたご主人が、たまには休んだらどうだと、休みをなかば強引に与えました。池富さんは休暇先で「ランドスケープ」式の造園事業を目にしますが、山一つを庭に見立てたその事業にアメリカの造園家の規模の大ききに驚いたそうです。池富さんが滞在したホストファミリーや休暇について、池富さんに直接語ってもらいます。




滞在先はミネソタ州のセントポールから車で30分走った所にある[30分と言っても、法定速度65マイル(時速100キロ近い)でしたから、それなりの距離はありました。]、ヘイスティングス(Hastings)という田舎町でした。1年ほど前にミネソタで橋の崩落事故がおきましたが、自分もよくトゥインシティーに行く時など通っていたので驚いてホストに電話したのを覚えています。

ホストは、サム・ケデム(Sam Kedem)さんで、ポーランド人で17歳年下の奥さんのレイチェルさん。娘さんが居るらしいのですが、日本の京都の大学で講師(生徒?)をされていたみたいで、一度もお会いしたことはありません。日本に帰ってから連絡をと思っていたのですが、シカゴの大学に行かれたということで行き違いになりました。

と同時に、スロバキアから、これはミネソタ独自の制度であるMAST(ミネソタ アグリカルチャー スチュウデント トレイニィ-)という農業訓練生制度を利用して、渡米してそこのホストにお世話になっていたマーティンと、ホストの奥様の甥っ子でウクライナ人のアレックスと五人で生活していて、国際色豊かな環境でした。

休暇は二回とって、一度目は両親を誘ってアメリカ東部のボストン、ニューヨーク、ワシントンなどをその当時自分が所有していた車で周遊しました。そこでは、唯の観光と世間見物で終わりました。二度目は、近くの農場に研修に来ていたポーランドとチェコの友人と一緒に西海岸に行き、ラスベガス空港で車を借り、サンフランシスコややロサンゼルス等を回りました。

ここで、国立公園に何ヶ所か行き、ヨセミテ国立公園のセコイア杉の巨木(直径3メートル以上)に迫力を受けました。箱根の縄文杉を越す木々を見たのはここだけです。後、ランドスケープガーデンを見たのは、サンディエゴの庭師の所です。自分の家が丘陵地の頂上にあり、目下の自然は先祖が木や花を植えて、自分はそれを守ってきたのだと言うことでした。


2003年4月、ミネソタでの研修を終え帰国した池富さんは、佐世保の実家に戻り、お父様の経営する会社で実務を学びました。観葉植物を中心にした緑のトータルコンサルティング事業へ向けて、学生時代からまさにまっしぐらの道のりです。そして、満を持して2005年3月にIGL(アイ・ジー・エル)を設立されます。26歳での開業でした。

開業地に選んだのは植木町。「実家が佐世保を拠点に長崎、佐賀、福岡と展開していたので、私は熊本以南のマーケットで勝負しようと思っていました」と考えていた、そんな矢先、最初に注文を貰ったのが玉名のお客様でした。そこで、玉名にも熊本にも近いということで植木町が有力候補に挙がったのでした。「植木の植木屋って面白いんじゃないか、ということもありました」。

そして、池富さんは昨年4月に結婚され、今年2月24日にはご長男・大稀(だいき)君がお生まれになりました。奥様は小学校の同級生で、二人が25歳のときに病院で偶然に再会。池富さんはその病院へ観葉植物を納めていました。奥様はその病院に入院されていたのです。そのとき池富さんは奥様を励ますつもりで「そのうち飯でも食いに行くか?」と声をかけて分かれました。

それから仕事に邁進する池富さんは、奥様に声をかけたことなどなかば忘れていた頃、奥様と街中で再び偶然に出会うことになります。そのとき奥様から「いつ、ご飯食べに行くの?」と言われたのをきっかけに交際が始まり、昨年、二人は結ばれることになりました。私は以前、「偶然という名の運命」という自作の曲を書いたことがありますが、このようなケースをそう呼んでいます。

池富さんは現在、600坪の敷地を自分の手で造成中です。そこに観葉植物栽培用のビニールハウスを三棟建てる計画です。2010年の完成を当面の目標にしているそうです。現在の顧客は80軒。これを熊本県内全域で150~200軒まで伸ばしたいというのが池富さんの当面の目標。「ここまではなんとか一人でやっていける。そこから先に、南九州への展開が見えてくるんです」とあくまで自然体の池富さんは語ります。

池富さんにいただいた資料に、観葉植物の効用には、汚染物質浄化作用、カビ・バクテリア等の繁殖抑制作用、マイナスイオン作用、視覚作用、香り作用、エッジ効果、アートセラピー・アグリセラピー、フラシーボ効果があると書かれています。池富さんの夢は、オフィスや個人宅の室内空間を植物で潤う庭として提供すること。「きれいな植物で空間を演出し、空気清浄にも役立ち、香りも楽しんでもらえたらと思っています」と池富さんは語ります。




この資料にはそれぞれの効用について詳しいレポートがありますが、その中で、空気の清浄と汚染物質の除去が実は絶妙な関係にあることが書かれています。アメリカ航空宇宙局(NASA)が宇宙船の換気について研究した折、植物が光合成を行う際、同時に室内の汚染物質を吸収するということがわかったというのです。これ以上の情報開示は池富さんの著作権を侵害することになりますので、興味のある方は直接池富さんにお問合せくださいね。

そして、池富さんはこれから植物に電気を通して大きくする研究を行いたいそうです。雷の後に植物が大きく元気に育つことがあるそうで、これはイオンの影響によるものではないかというのが、池富さんの仮説です。とにかく、池富さんはこの植物、庭づくりに関してまっしぐらに進まれています。しかも、その姿は実に自然体です。




私は池富さんに、創業から16年で東証一部上場を果したワタミ㈱の渡邉美樹社長の姿を見ます。渡邊さんとは今から20年前に求人広告の担当営業マンとしてお付き合いさせていただきました。「夢に日付を入れる」で有名な渡邊さんのポリシーはその頃から生きていて、16年後の上場も日付が入れられていました。池富さんは当面10年計画で事業を展開されていますが、きっと10年後のIGLは南九州一円のオフィスや個人宅を観葉植物で彩ってくれているのではないかと思います。

池富さん、IGLへのアクセスは下記まで。




IGL(アイ・ジー・エル/Indoor Green Leading)/緑のトータルコンサルティング
代表 池富 猛
〒861-0154 熊本県鹿本郡植木町大字那知
TEL(096)215-3210
FAX(096)215-3218

取材が終わって別れ際に、池富さんから思わぬプレゼントをいただきました。「ピレア グラウカ」というイラクサ科の植物です。池富さん、ありがとうございました。ちゃんと育ててますよ。



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