お客様のドレス必ず探します、「KINA」代表土本宏子(13)

エントワークリンケージ

2008年03月02日 03:42

13回目のゲストは、「アメブロ」で互いに読者であるドレスショップ「KINA」のオーナー・土本宏子さん(24)。彼女は21歳でドレスの訪問販売を始めて、二年目の昨年6月にオンラインSHOPをオープン、続いて翌月の7月にはリアル店舗「KINA」を下通りの光琳寺通り沿いに出店しました。今月の20日に24歳になったばかりの土本さんに対する私の興味は、彼女がビジネスを訪問販売、出張販売から始めたという点にありました。15:00開店前の1時間をいただき、このうら若きドレスショップ・オーナーに話をうかがいました。




いきなり余談ですが、私が約束の10分前にショップの前を通りかかったときに、なんと一軒手前の隣のビルの隙間から黒煙が立ち始めているではありませんか。そこに置かれた建築材のボードから出火していたのです。気づいたときには、近隣のお店から慌てて出てこられた女性から消火器を受け取り、消火活動をしていました。出火の原因は定かではありません。

短い消火活動を終えた私は、約束の時間に「KINA」に到着。ワインレッドの絨毯とブラックの内装の店内にはドレスやスーツが所狭しと並んでいます。そこに土本さんと店長の池田晴美さんがいらっしゃいました。挨拶もそこそこに、まず、「KINA」というネーミングについてうかがうと、彼女の愛犬(オスのパグ)の名前をつけたそうです。毛が黄色だったことから「キナ」。この「キナ」は彼女のブログでも度々登場していました。

彼女がこの「KINA」を始めたきっかけは、三年前にとあるテレビ番組でキャバクラ女性の24時間を追ったルポルタージュを見たことでした。その中で登場したある男性が、新宿で女性たちにドレスを訪問販売している模様があって、彼女にインスピレーションをもたらしました。「これなら、私でもできるかも」→「これ、私ならできるな」→「これをやろう」と瞬時に決断したそうです。(外では消防車のサイレンの音が聞こえていました・・・)

土本さんは中高時代に、自分が団体行動で生活することに違和感を持っていました。思い悩んだ末、彼女はご両親に相談して高校中退の道を選び、社会に出ることを決めます。居酒屋のアルバイトから始め、18歳になったときにキャバクラ、そしてクラブの世界へ。そのときには三つの仕事を掛け持ちでこなしていたといいます。土本さんにとっては忙しい仕事も、「世の中にはこんなにいろんな仕事があるんだ」という好奇心が先立ちました。しかもこの三年間で仕事をしながら、彼女は通信教育で高校卒業の資格も取得しています。

自分が夜の仕事で着用していたことからドレスの訪販を決意したものの、アパレル業界の知識、販売経験のない彼女は、これまでのつてを頼ったり、ネットで熊本や全国に仕入先を求めますが、既存のドレスショップとのバッティングなどで仕入れさせてくれるメーカーがなかなか見つかりませんでした。そんな中、土本さんに「韓国なら安く仕入れられる」という情報が飛び込んできました。暗中模索中の彼女はあれこれ考えるよりも先に、まず友人と韓国に飛んでいました。なぜか、釜山(プサン)へ。

「韓国のこと、何も知らなかったんです。韓国なら釜山だと思って行きました」と。結構大胆です。「当然韓国語も喋れないので、釜山で日本語を話せる人を探して友達になって、ドレスの仕入先を教えてもらったんです。そうしたら、それならソウルに行きなさいって言われたんですね」。土本さんは、その「友達」から韓国で有名なメーカーの情報を得て、いったん帰国後、今度は一人でソウルに向かいます。

釜山のときと同じように、初めてのソウルでも日本語の喋れる韓国人を探して、そのお目当ての仕入先に行き着いた彼女が仕入れたドレスは50着。このドレスをもとに、いよいよ移動販売「KINA」の第一歩がスタートします。実際販売してみると、サイズの違いなどがあっていくつか問題点があることがわかってきました。仕入先との何度かのやり取りを通じて、いつしか先方にカット、縫製を指示できるようにまでなっていました。

訪問販売先は紹介先から紹介先へと広がり、県内で契約店は30店舗に達しました。九州各地の訪問先へもその流れで鹿児島、宮崎、大分と広がっていきました。私が不意に「他県へ出張されるときにはどんなホテルに泊まるんですか?」とお聞きしたところ、「いえいえ、そんな勿体ないことはできません。すべて日帰りです。一度に100着ほど持って行くんですが、はじめはすべて一人でやりました。お客様の仕事柄、朝の4時から販売開始なんてこともあります。今は出張先に搬入などお手伝いしてくれるスタッフがいるので、多少は楽になりました」と。かなりパワフルです。

熊本を中心に九州各地で実績を積んでいく土本さんの姿がいつしか業界関係者の間で噂になり、日本のメーカーからも声がかかるようになります。今ではメーカーサイドから営業に来るほどになっているそうです。街を歩いていると今でもキャバクラからスカウトされたりするそうですが、土本さんは逆に営業をかけることもしばしばあるそうです。まだ電話でしか話したことのない仕入先の社長さんからもブログを見て、「全国的に見ても一番若いオーナーだ。頑張れ」と言われましたという程の活躍ぶりです。




そして、昨年のオンラインSHOPとリアル店舗「KINA」のオープン。「最初は、外販一本でやっていくつもりでした。お店を出すなんて全く考えていませんでした」と語る土本さん。「外販を続けているうちに、どうしても外販に行けないお客様がいらしたり、周りから店を出したらいいじゃないかとか、君ならできるよなんて言ってくれる方々がいて、じゃ、やってみようと思うようになったんです」。

出店資金は、昨年の5月に国民金融公庫からの融資を取り付けました。「自分で事業計画も作りました。最終的には税理士さんの助言を受けながらですけど・・・」と、立派な事業家です。オープンのときは、数多くのスタンド花が寄せられ、ショップのある3階から1階までの階段で納まりきれずに、光琳寺通りにまで並ぶほどだったそうです。取り扱い商品は、今では国内メーカーのものになっているそうです。なかでも、㈱HOT CLOTHING社の「R」、「WPC(WAY PAST COOL)」などは、仕入元と「KINA」の完全独占販売。

土本さんのモットーは、「お客様にあったドレスは必ず探し出します」ということ。「今の若い女性は細い人が多いんですよ。私よりもふたまわり位細いんです。そんなお客様にもピッタリのドレスや、逆に私よりふたまわり位大きいサイズのドレスなど、他所ではなかなか見つけられないものでも、私たちは必ず準備する自信があります」と、この点だけはやけに力が入っていました。さすがにオーナーです。

ちなみに土本さんは170cmの長身。しかもヒールを履いているので180cmには達していて、私には充分スリムに見えますし、サイズはM(9号)だそうです。彼女の言う、ふたまわり細いサイズとはSS。実物を見せてもらいましたが、実にか細いスーツでした。外販のみのころは、ドレス一本でしたが、店を構えるようになって、ダンス衣装、スーツ、パーティ用ドレスなどを求める顧客が増えたそうです。




土本さんにこれからの目標を聞きました。「売上の目標は特にありません。お金はどうでもいいんです。まずは、お客様に喜んでもらえるドレスやスーツを一着でも多く提供することです。そのためにオンラインやリアルのショップを充実させることです」。彼女の仕事上の立ち位置は、「無理はしないこと。自分で出来ることは自分でやる。できないことは、できる方にお願いすること」と、実に自然体です。

「学生のころは、心のどこかで自分の居場所がないと思っていました。バイトを掛け持ちしていたころは、一日が終わって、家に帰って寝るだけの毎日でした。楽しかったけれど、明日に希望なんて持っていませんでした。でも、今は忙しいんですが、今日そして、明日に希望が持てるようになりました。そして、ここに自分の居場所があることが何より幸せです」。

「今、引きこもりが話題になっていますけど、私には彼らの気持ちがわかるんです。でも、社会に出ることは私にもできたんだから、皆にも必ずできると思っています。特に自営業は、私がそうだったように、引きこもっている人に向いていると思うんです。一つの価値観ではなく、いろんな価値観があって、それをどう活かすかの自由があるからです。是非とも外の世界に一歩踏み込む勇気を持ってほしい」。

土本さんにこれまでの23年間を振り返ってもらうと、こんな言葉が返ってきました。忙しくなった、そんな彼女にとって今残念なことは、外販に行く機会が少なくならざるを得ないことでした。他県への外販では観光などする時間がない彼女ですが、他県の風景や人々に触れることが今でも新鮮で好きなのだそうです。

「人生の最期に、土本宏子ってどんな女性だったと言われたいですか?」とお聞きしました。「自由な人だった、と言われたいです」という返事でした。団体行動が嫌だったいう彼女が、自らの行動によって多くの顧客を得、それが今、全国に広がっていることに率直に驚きを感じます。しかし、束縛されない自らの行動が、今の土本宏子さんを活き活きと輝かせている。それがすべてを語っているのだと思いました。

土本さんが外販で培った人脈は更に広がり続け、オンラインSHOPで全国の顧客を掴み、リアルSHOPで地元の新たな顧客層を確実に掴みつつあります。土本さんは意識することもなく結果的にビジネスの基本を一歩一歩歩んでいます。インタヴューを終え、「KINA」を後にしながら表に出ると警察が火元の現場を検証中でした。自分の足元を見ると、靴が消火剤で真っ白でした。




ドレスSHOP「KINA」
〒860-0807
熊本市下通り1-12-3 高津ビル3F
TEL&FAX:096-355-2225
http://www.kina-kina.jp/
E-mail:shopmaster@kina-kina.jp

土本宏子さんのブログ
■熊本DRESS・SHOP『KINA』土本の思いつき日記
http://ameblo.jp/kina20050601/entry-10076292580.html

池田晴美さんのブログ
★熊本DRESS・SHOP『KINA』店長のブログ★
http://ameblo.jp/kinamoco/

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