2008年03月31日
世界を目指す熊本在住の若き画家・遠藤徳人(18)
第18回目のゲストにお迎えしたのは、第四回目のゲスト・黒田恵子さんがご自分のギャラリー「ADO」での個展開催などで支援する画家・遠藤徳人(とくひと)さん(24)です。遠藤さんと最初にお会いしたのは2月1日、黒田さんのギャラリーでした。1月22日に最初に「ADO」にお邪魔した際、二階にあるギャラリーで遠藤さんの絵をはじめて見ました。そこに飾られた墨絵調の昇り龍、原色をふんだんに使った龍、抽象的なPOPアートなどなど様々なタッチが印象的でした。
遠藤さんはこの3月、黒田さんのご紹介で取材させていただいた第七回目の渡辺真希子さん、第八回目に登場いただいた「人間建築探検處」の代表であり、建築家の長野聖二さんが代表を務められる「河原町文化開発研究所」のある河原町商店街の住人となりました。今回は、このブログとのカテゴリーとはちっとはずれますが、そんな訳で黒田さんのギャラリーでのインタヴューをお送りします。

遠藤さんに初めてお会いしたとき、彼の分厚いポートフォリオ(作品集)を見せてもらいました。そこにも実に多彩なタッチの絵が並んでいて、その一連の絵に興味を持ちつつ、そんな絵を描く彼自身についても興味がわいたのでした。その中で一際印象的だったのが「ミスターCLOUD」というキャラクターでした。
絵を描き始めた当初、彼の頭の中にこのキャラが突然現われたそうで、何枚もの絵が描かれていました。今回は残念ながらこの「ミスターCLOUD」を紹介できませんが、遠藤さんによると「このキャラは絵に対するモヤモヤした気持ちの表れだったような気がするんです。ですから最近はほとんどこのキャラ自体を描くことはありません」ということでした。しかし、最近は別の角度で自分を見つめ直すことが多いと語る遠藤さん。絵に集中し、自分の世界を描き出す「自分」と社会人としての「自分」の存在。その自分の中のバランスをどう取っていくか?それが今の彼の課題だと。

絵画という方法で自分を表現しようとするアーティストにあれこれ言葉で語ってもらうということに果たしてどれだけ意味があるのか?今回はここに自分なりに疑問を持ちながらインタヴューに臨みました。そんな思いでいた私は、黒田さんにまず、これから遠藤さんに何を望みますかと尋ねてみました。「絵で人の心を動かせないうちは、人として当たり前のコミュニケーションが取れることが大事なことだと思います。遠藤君がそうだということでありませんが、自分の作品を人にきちんと語れる画家になってほしいと思います」と、私の疑問を知ったかのようなコメントをされました。そう言えば岡本太郎さんや日比野克彦さんでさえ実に饒舌に語っているではありませんか。少し気が楽になった私のインタヴューが始まりました。

遠藤さんは開新高校出身。幼い頃から漫画家に憧れて絵を描いてきた彼は、熊本デザイン専門学校に通ううちに画家の道を進むことを選んだといいます。私の年代になると開新高校と言われてもピンときませんが、前身は熊本第一工業高等学校。更に遡ると、熊本鉄道高等学校、明治37年の東亜鉄道学院に行き着くんですね。平成16年に男女共学になっていますから、創立から丸100年間男子校としての歴史を歩んできています。話が逸れました。
絵描きの道を選ぶと言っても、プロとしての画家は当然ながら棘の道。遠藤さんは一時期、就職することも考えたそうですが、就職を決めた途端に大病に遭ったり、再び絵描きを諦めかけたときに知人から個展を開かないかという誘いがあったりと、彼が絵を諦めようとする度に運命が遠藤さんに画業を捨てさせなかった経緯がありました。
絵を描きつつ遠藤さんはずっと「自分らしくある」ことについて思い悩んでいたといいます。人と同じ考え、行動をとることに対する閉塞感がありました。この問題に自分なりの決着をつけられたのが、昨年訪れたアメリカで、そこに暮す人々の日常を知ってからだったそうです。シカゴ、コロンバスを友人とホームステイをしながらの二週間の旅で、現地の人々が自由に自己を主張しながら生きる姿を目の当たりにして「あぁ、こうやって自分らしく生きていいんだ」と自信を持ったそうです。

そんな遠藤さんが絵を描くときに常に考えていることは、ある二つの価値観をどうやったら一つに融合できるかということだそうです。たとえばそれは母親の価値観と父親の価値観。双方共にその価値観を理解できる。そこでこの二つの価値観を掘り下げていく事によってその源泉的な価値観、1+1が別の新たな「1」になるという価値観を導くために思索すること。別の言い方をすれば、卵子と精子が一つになって新しい生命となるというプロセスと結果をどう表現するか。そこに彼のアーティスティックな営みがあります。
遠藤さんは最近この河原町にアトリエを持ちました。「これからは気が狂うほど描きたい」と熱く語ります。このアトリエで6月1日から二週間にわたって開かれるギャラリーADOでの個展に向けて、作品を作り上げていく予定です。魂を込められた作品だけをここで展示したいと語ってくれました。その個展ではライブ・ペイントも披露する予定です。
先日もクラブでライブ・ペイントを行ったそうです。クラブの音楽のテーマが「男が女を口説く」というものだったので、彼の得意とする陰影技法でこのテーマを受けて抽象的な人物を描いたそうですが、「今年一番の自信作っすよ」とご機嫌でした。この絵はまだ会場に残してあって、この日は見ることができませんでしたが、6月の個展には登場するはずです。
遠藤さんに目下のライバルは誰ですか?と尋ねてみました。「art horymen、ado(渡辺真希子)さん、eichiさんには少なくとも負けたくありません。でも、熊本の画家たちの中でも、この河原町に集るアーティストたちのレベルは高いっすよ。マジッ、ヤバイッス」。訳してもらうと、ここに集まるアーティストたちは、趣味や癒しで絵を描いているのではなく、哲学をもって絵を描いている人が多い、ということでした。
最後に黒田さんに遠藤さんの絵について語ってもらいました。「タッチがどうとか、色彩がどうかということではなく、彼の絵に、とにかく『勢い』を感じたんです。彼にはまず絵を通して、たった一人でもいいからその人の心を動かすことができる絵描きになってほしいですね。自分の中で悶々としたものがあれば、その息吹を一枚の絵に入れ込んでほしい。自分のフィルターを通して蒸留水のように浄化した思いを描いてほしいと思っています」と、熱い叱咤激励でした。

遠藤徳人さんへのアクセス;
TEL;080-5214-0740
Emai;art-style.89wrangler@ezweb.ne.jp、cluodtoku@yahoo.co.jp
<遠藤徳人個展>
日時;2008年6月1日~14日
場所;「GALLERY ADO」;熊本市河原町2
TEL;096-352-1930(OPEN;11:00~20:00)
http://www.just.st/303750
遠藤さんはこの3月、黒田さんのご紹介で取材させていただいた第七回目の渡辺真希子さん、第八回目に登場いただいた「人間建築探検處」の代表であり、建築家の長野聖二さんが代表を務められる「河原町文化開発研究所」のある河原町商店街の住人となりました。今回は、このブログとのカテゴリーとはちっとはずれますが、そんな訳で黒田さんのギャラリーでのインタヴューをお送りします。

遠藤さんに初めてお会いしたとき、彼の分厚いポートフォリオ(作品集)を見せてもらいました。そこにも実に多彩なタッチの絵が並んでいて、その一連の絵に興味を持ちつつ、そんな絵を描く彼自身についても興味がわいたのでした。その中で一際印象的だったのが「ミスターCLOUD」というキャラクターでした。
絵を描き始めた当初、彼の頭の中にこのキャラが突然現われたそうで、何枚もの絵が描かれていました。今回は残念ながらこの「ミスターCLOUD」を紹介できませんが、遠藤さんによると「このキャラは絵に対するモヤモヤした気持ちの表れだったような気がするんです。ですから最近はほとんどこのキャラ自体を描くことはありません」ということでした。しかし、最近は別の角度で自分を見つめ直すことが多いと語る遠藤さん。絵に集中し、自分の世界を描き出す「自分」と社会人としての「自分」の存在。その自分の中のバランスをどう取っていくか?それが今の彼の課題だと。

絵画という方法で自分を表現しようとするアーティストにあれこれ言葉で語ってもらうということに果たしてどれだけ意味があるのか?今回はここに自分なりに疑問を持ちながらインタヴューに臨みました。そんな思いでいた私は、黒田さんにまず、これから遠藤さんに何を望みますかと尋ねてみました。「絵で人の心を動かせないうちは、人として当たり前のコミュニケーションが取れることが大事なことだと思います。遠藤君がそうだということでありませんが、自分の作品を人にきちんと語れる画家になってほしいと思います」と、私の疑問を知ったかのようなコメントをされました。そう言えば岡本太郎さんや日比野克彦さんでさえ実に饒舌に語っているではありませんか。少し気が楽になった私のインタヴューが始まりました。

遠藤さんは開新高校出身。幼い頃から漫画家に憧れて絵を描いてきた彼は、熊本デザイン専門学校に通ううちに画家の道を進むことを選んだといいます。私の年代になると開新高校と言われてもピンときませんが、前身は熊本第一工業高等学校。更に遡ると、熊本鉄道高等学校、明治37年の東亜鉄道学院に行き着くんですね。平成16年に男女共学になっていますから、創立から丸100年間男子校としての歴史を歩んできています。話が逸れました。
絵描きの道を選ぶと言っても、プロとしての画家は当然ながら棘の道。遠藤さんは一時期、就職することも考えたそうですが、就職を決めた途端に大病に遭ったり、再び絵描きを諦めかけたときに知人から個展を開かないかという誘いがあったりと、彼が絵を諦めようとする度に運命が遠藤さんに画業を捨てさせなかった経緯がありました。
絵を描きつつ遠藤さんはずっと「自分らしくある」ことについて思い悩んでいたといいます。人と同じ考え、行動をとることに対する閉塞感がありました。この問題に自分なりの決着をつけられたのが、昨年訪れたアメリカで、そこに暮す人々の日常を知ってからだったそうです。シカゴ、コロンバスを友人とホームステイをしながらの二週間の旅で、現地の人々が自由に自己を主張しながら生きる姿を目の当たりにして「あぁ、こうやって自分らしく生きていいんだ」と自信を持ったそうです。

そんな遠藤さんが絵を描くときに常に考えていることは、ある二つの価値観をどうやったら一つに融合できるかということだそうです。たとえばそれは母親の価値観と父親の価値観。双方共にその価値観を理解できる。そこでこの二つの価値観を掘り下げていく事によってその源泉的な価値観、1+1が別の新たな「1」になるという価値観を導くために思索すること。別の言い方をすれば、卵子と精子が一つになって新しい生命となるというプロセスと結果をどう表現するか。そこに彼のアーティスティックな営みがあります。
遠藤さんは最近この河原町にアトリエを持ちました。「これからは気が狂うほど描きたい」と熱く語ります。このアトリエで6月1日から二週間にわたって開かれるギャラリーADOでの個展に向けて、作品を作り上げていく予定です。魂を込められた作品だけをここで展示したいと語ってくれました。その個展ではライブ・ペイントも披露する予定です。
先日もクラブでライブ・ペイントを行ったそうです。クラブの音楽のテーマが「男が女を口説く」というものだったので、彼の得意とする陰影技法でこのテーマを受けて抽象的な人物を描いたそうですが、「今年一番の自信作っすよ」とご機嫌でした。この絵はまだ会場に残してあって、この日は見ることができませんでしたが、6月の個展には登場するはずです。
遠藤さんに目下のライバルは誰ですか?と尋ねてみました。「art horymen、ado(渡辺真希子)さん、eichiさんには少なくとも負けたくありません。でも、熊本の画家たちの中でも、この河原町に集るアーティストたちのレベルは高いっすよ。マジッ、ヤバイッス」。訳してもらうと、ここに集まるアーティストたちは、趣味や癒しで絵を描いているのではなく、哲学をもって絵を描いている人が多い、ということでした。
最後に黒田さんに遠藤さんの絵について語ってもらいました。「タッチがどうとか、色彩がどうかということではなく、彼の絵に、とにかく『勢い』を感じたんです。彼にはまず絵を通して、たった一人でもいいからその人の心を動かすことができる絵描きになってほしいですね。自分の中で悶々としたものがあれば、その息吹を一枚の絵に入れ込んでほしい。自分のフィルターを通して蒸留水のように浄化した思いを描いてほしいと思っています」と、熱い叱咤激励でした。

遠藤徳人さんへのアクセス;
TEL;080-5214-0740
Emai;art-style.89wrangler@ezweb.ne.jp、cluodtoku@yahoo.co.jp
<遠藤徳人個展>
日時;2008年6月1日~14日
場所;「GALLERY ADO」;熊本市河原町2
TEL;096-352-1930(OPEN;11:00~20:00)
http://www.just.st/303750